著者

三浦瑠麗

今回のダイアログ:「男はATMだから」という年上男性の発言に“違和感”が…

2021/09/24 10:25

みなさん、こんにちは。三浦瑠麗です。

このニュースレターでは、身の回りのこと、社会事象、そもそも生きる過程でぶつかるさまざまな悩みや壁などについて、読者のみなさんの質問にお答えしていきます。

ぜひ、思うところをどしどしとお寄せくださいませ。

*本ニュースレターへの感想も併せてこちらで募集しております。WISS内でもご紹介させていただく可能性がございますので、ご承知おきください。

また、本ニュースレターのコンテンツは、WISSだけでなくその他のメディアでも転載、活用させて頂く予定です。その際に、本ニュースレター内で取り上げられた質問や感想を掲載する場合がございます。ご質問や感想をいただく際には、掲載にご承諾いただいたものとして進めさせていただきますので、ご了承ください。

 

今回は、まずこんな質問です。

 

年上男性のパートナーへのリスペクトが少ないのが気になる

20代女性です。「男はATMだから」と言ってしまう年上男性が苦手です。仕事場で年齢差のある男性と話すことが多いですが、社会的にもそういう意識がある気がしています。多分冗談か、何も考えていないかではあると思うのですが、彼らがいまの立場になるために、彼らのパートナーが家事や子育てをしながら彼らを支えてきたのだと思うと、パートナーへのリスペクトが少ないように感じます。

また、「(ワーママである)あなたもパートナーを支えるために家事育児をして、仕事はそこそこのつもりだろう」という無意識の偏見や「(そこそこの年齢になった子どもを横に)子どもを見ながらでも仕事くらいできるだろう」という子育てフェーズが違うことへの無理解を感じるからです。割り切って流しながら付き合うしかないのでしょうか。"

 

 いまあなたがお勤めの会社のなかで、男女、という性別によって突如線が引かれてしまうこと、自分がその向こう側に位置づけられてああだこうだ言われてしまうだろうことへの違和感、不快感はよくわかります。とりわけ、上の年代は、男か、女かという二分法ありきでまず考えることに慣れており、それは恋愛だとか憧れの対象として異性を意識するということではなくして、個人を見る前にまず属性で判断してしまうから。一方で、実際に女性は家庭の中で多くのことを担いがちだし、性別役割分業が色濃く社会の慣習として残っている以上、「彼らの常識」に基づいたかたちで働きつづけることには相当な困難がある。それを分かっていれば、発言自体もう少し変わってくるだろう、とそういうことですよね。

 でも、いま40歳のわたしからする「理解」というのも、あなたが実際に感じてい

る不快感の一部でしかないかもしれない。年の差というのもあるし、それにわたしはそもそも勤め人生活を長くはつづけられなかったからです。いまはあまりに多くの自由を手にしているし、家族も40になってキャリアを築いたあとのわたしに干渉することはないのですから、少しずつその感覚が薄れています。

 相手の持つ偏見が気になるのは、あなたと感覚を共有できない上の年代があなたに対して支配力を持っているからでしょう。干渉さえされなければ、親や祖父母が年長世代にありがちな偏見を持っていてもさほど気にならなくなるだろうし、世の中に満ち溢れる偏見すべてに怒って生きていくほどの暇はおそらくないはず。子育てをして、仕事で一つ一つ結果を出していくのには大変な労力が必要ですからね。

 相手が支配力を持つ立場である以上、すべてに適当に話を合わせてやっていくことは望ましくありません。あなたが子育てをしながら仕事をするうえでぶち当たる壁を乗り越えるには、どうしても周囲の理解と協力が必要ですし、男女の別に限らず、最近はワークライフバランスに関する考え方が多様化しています。週末のメールに返信するかどうか、午後17時以降に会議を入れるかどうかは生活の質に大きく影響を与えますし、上司のこれまでやってきた常識に合わせていたら、女性の活躍はなかなか進まないからです。

もちろん、子育て中の人が週末のメールにすぐ返信をしたい、17時以降もwebを活用して積極的に会議を行いたいという考えであっても構いません。しかし、そうした働き方をする以上、とりわけ乳幼児期には家事や育児のアウトソーシングが必要になるでしょう。チームのなかでそうした慣行によって極端に損をする人が出てくることはやはり問題です。工夫一つで何とかなることは、ぜひ積極的に提案し、伝えましょう。

 

重要なのは、不快感をただ表明するだけでは、制度や運用の改善の話にはならないということです。また、「相手の認識を正したい」という欲望は早々に諦めた方がよいのではないかと思います。

「男はATMだから」という言葉も、その年上の男性の何らかの個人的体験に基づいているのでしょう。世の中には、与えることではなく与えられることしか考えない人間はたくさんいるからです。そして、正直なところ、楽をすることやちやほやされることしか考えていない若い女性はけっして少なくないし、お金という交渉力を持ったことで途端に勘違いをする男性も多くいます。それが彼自身の体験だというのなら、「へえ。そんなこともあるもんですか。残念なことですね。」と返しておけば、「冷たいねえ」くらいのことは言われるかもしれませんが、憐れまれるのを恐れて、あなたにそれ以上突っ込んではこないでしょう。

「とはいえ、奥さんと入れ替わりたいとはほんとのところは思ってないですよね」と、意地悪なコメントをしてもいいのでしょうが、まあ、わたしならしませんね。人に意地悪をしたらたいてい意地悪しか返ってこないから。

相手が互いを尊重して感謝しあう幸せな家庭環境を築けなかったことは、あなたには関係のない話であって、その理由は夫婦にしかわからないものです。彼の妻へのリスペクトのなさは、あなた自身、未来にしのびよる影のように恐れているものでもあるでしょう。でも、そのコメントが向けられている対象は彼の妻であってあなたではありません。

主婦(夫)という生き方は誰かに仕える必要はありませんが、かえってつらくなる可能性があるのは、家族による評価しか与えられないことです。今後どのような働き方をするにせよ、あなた自身がパートナーと幸せで対等な関係を築き、生きがいを持って充実した人生を送っていくことこそが、女性の幸せの増大につながると思ってください。

 

逆に、あなたの夫や夫婦関係について、他人からそのようなコメントをされた場合ですが、短く「え、違いますよ」と言えばいい。「なんで?ちがうの?」と聞き返されたら、「特にATMだと思ったことも、夫がそう思っている風もないですね」と返せばいいのであって、余計なことは言わなくていいのです。それも、鼻をふんと鳴らすように馬鹿にして言う必要はありません。むしろ、あなたが不満を持っていることを相手に気取られることは、この世知辛い社会で生きていくうえでは、相手に優位に立たれる可能性を意味します。

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