著者

岩渕潤子

怪盗ルパンもびっくり!? 本当にあった巨額美術品強奪事件

2021/10/06 09:47

名画の行方は今もナゾ・・・

2021年の今年、1971年10月24日から放映開始された『ルパン 3世』シリーズがTVアニメ化50周年を迎えることで話題になっていますね。 『ルパン3世』パート6が2021年10月9日(土)24時55分より日テレ系で放送開始と聞いて、実は、私もわくわくしているオトナの一人です。

 さて、なぜ、ここで唐突に『ルパン3世』の話をしているかというと、シリーズの中では数限りない金庫破りや宝石強奪、「あの国がモデルかも?」という国際紛争がらみの奇想天外なストーリーのほかに、「NYのメトロポリタン美術館」「パリのルーヴル美術館」「ワシントンDCのスミソニアン」といった、実在する美術館・博物館を舞台にした名画強奪の試みも度々描かれてきたからです。しかも、日本の作品にしては珍しいことですが、こうした美術館などが実名で登場するだけでなく、その外観が実物にかなり忠実に描かれている点、実際にそこを訪れたことのある人たちは目を奪われて、一瞬ニヤッとしてしまうのではないでしょうか? そういう意味で『ルパン3世』の国際性と文化度の高さのリアリティは、ハリウッド大作のジェームズ・ボンド・シリーズやミッション・インポッシブルと肩を並べるレベルであると…少なくとも私はそう考えています。

 

意外なことに、海外での美術館からの絵画盗難事件はそれほど珍しいことではなく、数ヶ月に一度ぐらいは日本のニュースでも報じられています。しかしながら、1990年3月18日未明、ボストンのイザベラ・ステュワート・ガードナー美術館で起きた13点、5億ドル(今の為替レートでおよそ550億円)相当に及ぶ名画強奪事件のスケールは桁違いでした。美術全集にも載っている世界的な名画でフェルメール作の『コンサート』、『ガリラヤ湖の嵐』 を含むレンブラント3作品 、ドガ、マネなどの評価額はあまりに高く、当時、必ずしも経営状態が盤石とはいえなかったガードナー美術館がこれらの絵画に保険をかけていなかったという事実も明らかになり、多くの美術館が直面する問題として世界の耳目を集めることとなりました。一方で、美術的な価値が高くない工芸品が一緒に盗まれていたり、絵画として最も価値が高いティツィアーノやボッティチェリの作品は持ち去られなかったことに多くの人が頭をひねりました。

 

 事件の実行犯の男二人は、監視カメラの映像に、明らかに警察官の制服と思われるものを着用して写っていました。美術館の通用口の近くの詰め所には夜間担当の警備員二人がいて、監視カメラの映像を確認しながらインターフォンごしに男たちと話をしたと、彼らはFBIの聴取に答えています。近所で警察への出動要請があり、聞き込みをしているところだという話を聞いて、何も不審に思わず彼らを招き入れてしまったそうです。  

 犯人の二人の男…警察官に変装し、一人は明らかにつけ髭をつけていたといった詳細や警備員はあっという間に手錠をかけられ、ダクト・テープでぐるぐる巻きにされ、地下のスティーム・パイプに繋がれた状態で発見されたといった話を聞くと、この「二人の男」の顔が、私の頭のなかではルパン3世と次元大介に自動的に変換されてしまうのでした。ならば石川五ェ門はどう関わってくるのか…という話になるわけですが、実はイザベラ・ステュワート・ガードナー夫人は日本人の岡倉覚三(日本では岡倉天心という名前の方が知られているかもしれませんが、彼は当時、ボストン美術館の東洋部長でした)と親交があり、彼が夫人に宛てた見事な毛筆の英語の手紙や贈った戯曲が収蔵されているので、五ェ門ならばそういったものに興味を示したかもしれません。

 そもそも美術館の創立者のガードナー夫人はアルセーヌ・ルパンと同時代の人で、19世紀半ばに生まれ、20世紀初頭にかけて活躍した女性でした。社交界の華であったイザベラのサロンに若き日のルパン1世が紛れ込んでいたという設定は、それはそれでドラマになりそうでわくわくしてしまいます。

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