著者

岩渕潤子

世界の富裕層に愛される「アート・バーゼル」…コロナの影響はあったのか?

2021/09/29 09:46

アートフェアって聞いたことありますか?

 9月に入って、ニューヨークからはシンフォニー、オペラ、ブロードウェイなどが、人数制限などはあっても、次々と観客を受け入れ始めたというニュースが相次ぎ、美術館はもちろんのこと、市内のギャラリーも人気のアーティストを目玉に据えた個展の幕開けで通常運転に戻りつつあるようです。そんな中、アート関係で注目を集めたのは、世界的なアートフェアとして知られるスイスのアート・バーゼル(https://www.artbasel.com/)が9月20日の週(一般公開は24日から26日まで)に、実際に出展ギャラリーと観客を集めて、いつものようにメッセを会場にして開催されたことでした。

 とはいえ、アメリカ合衆国・国務省は8月30日にも「スイスへの渡航は避けるべき(https://www.reuters.com/world/us-issues-covid-19-do-not-travel-advisory-switzerland-2021-08-30/)」との勧告を改めて出したばかりで、北米からの来訪者はごくわずか、一般売りのチケットは人数の上限が毎日設定され、出展者はもちろん、入場希望者は全員がマスク着用の義務付け、さらにはワクチン接種済、もしくはPCR検査が陰性であることを証明するリストバンドの着用を求められる厳戒態勢でした。当然ながら、いつもであれば大きな買物をする気満々のアメリカやアジアの大富豪たちの姿はほとんど見えず、高額の作品を持ち込んだ画商たちにとっては「長い1日=作品が動かない不景気な状況」を覚悟しなければならなかったようです。

 

 世界中名だたる画商たちがその国を代表するコンベンション・センターなどに集い、数日間に渡って美術品を直接来場者に売る「アートフェア」は、近年まで日本ではあまり聞き慣れないものだったかもしれません。しかし、株式会社ZOZO創業者の前澤友作氏が2016年、クリスティーズNYのオークションでジャン=ミシェル・バスキアの作品「Untitled」(1982)を当時のバスキアの最高落札額である5700万ドルで取得し、2017年にはサザビーズ ニューヨークのオークションでバスキアの別の作品を1億1000万ドルで落札して最高落札価格を更新したあたりから、雑誌などでアートフェアという言葉を目にする機会が増えてきました。特にベンチャー企業の若手経営者にとって、現代美術のコレクターであることは、前澤氏がそうであったように、世界のセレブと知り合いになるきっかけづくりに繋がることから、アートフェアに出かける日本の「青年実業家」の数は近年急激に増えたのです。

 そのピークは、コロナが世界の富裕層ビジネスに影を落とすようになる前年、2019年3月のアート・バーゼル香港だったと言って良いでしょう。その年のアート・バーゼルの時期、私も香港にいましたが、出展されていた日本の画商さんから、「今年はずいぶん多くの日本の若手経営者が来ていますよ」「日本の金融機関や銀行系シンクタンクからも大勢視察に来ているようです」というお話を聞きました。日本の金融機関が視察に来るのは、大概において何かのシーズンの終わりを意味するものなので、私は「おやまぁ…」と思ったものですが、それがまさかコロナのパンデミックというカタチで現れるとは、その時は想像だにしていませんでした。むしろその時気になっていたのは、香港の自由の今後についてでした。

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